私は20歳の頃から『黒い服』しか着ないことにしている。
約12年の月日が流れた。
人にも何で?とか同じものしか着ないの?って言われるよ。
そんな時は『黒の服だと影が出ないから痩せて見えるでしょ』とだけ答えてきたがそんなの関係ない。
きっかけは母が買ってきた 黒い上着 だった。
その頃、大学で彫刻をやっていたので登下校も つなぎ でいることが多かった。
何となくだらしない。彫刻の研究室もアトリエも更衣室もそれはそれは汚いなんてもんじゃなかった。
掃除好きの私からしたら毎日が苦痛だった。
つなぎかジーンズと簡単な上着で通う日々。まあ、正直服につぎ込むお金もなかったし、興味もなかった。
そんなある日、母が知人の洋品店から一枚の上着を買ってきてくれた。
それが運命の出会い。黒い服だった。
それまで、黒の服なんて葬式の時に着るものとしか考えてなかったが、着てみるとその心地よさと体中にビリビリ電気が走った気がした。
何だろう?この気持ち・・・。
次の日、さっそくそれを着て学校へ。なんか自分が変わったような気がする。いや、本当に変わってる自分がそこにいた。なんだか堂々と自分らしくいれるんだ。
それからはとにかく黒い服を買い集める。
気に入ったものは4枚まとめて買う。本当に黒い服を着始めてから自分らしくいられるんだ。
黒ばかりはダメだよ、運気が下がるなんて人から言われても黒しか着ないし買わない。
伊勢丹の私の担当の高田さんもアルマーニの方ももちろんわかってるので黒しか勧めない。
私のクローゼットは黒一色。
もちろん下着も靴下もすべて黒です。
こだわりというか黒は私の体の一部になってるような気さえするんです。
『渚の月』 8号 個展より
コメント