月を愛でる人

夕方、6時まえに玄関に出る。
海からとっぷりと真っ赤な月が上がっていた。
『今日は満月だ』
その不思議な美しさにしばし見とれていた。
傍らで母も『今日の満月は綺麗だね』と話す。
昨晩、同級生のアキラから無事に男の子が生まれたとメールが来た。
そうか、満月や新月の前は出産が多い。
そんなことも思い出しながら、親友の待つ熱海駅へ向かった。
親友との夕食。
彼は都内に住んでいるのだが、17歳のころから熱海が大好きで
年に何度も熱海に来てくれている。
今日も僕との夕食のために往復5時間をかけて来てくれた。今週で4週連続だ。
熱海の空気、自然、温泉、人情など何もかもが好きなんだそうだ。
毎日当たり前ように過ごしている僕らには見えない何かを感じてくれているに違いない。
そんな彼と出会ってから意気投合、親友としてお付き合いをしてる。
子供さんが自立をしたら熱海に居を構え、夫婦で一緒に住むのが夢だと言う。
そうしたら毎日一緒に呑みましょうって20年後を話す。
そう言われると僕は『僕が生きていたら』と答える(笑)。
今日はいつもの食事場所の前に僕のお勧めの串焼き屋をご案内した。
前にも紹介したが、ここも熱海の名店、熱海で一番の繁盛店だ。
(今回は食事の話をしたいのではないのでこれくらいにして・・・・。)
楽しい食事を終えてこの店を後にして次へと向かった。
歩いていると、糸川沿いにいつもいる客引きの老女が話しかけてきた。
『今日は月が綺麗だよ』と。
確かに僕は知っている。今日は満月だ。
そのことより、彼女が月の美しさを僕らに伝えてきたことに感動した。
一体今日、何人の人間が空を眺め、月を美しいと感じたのだろう。
すると親友の彼も僕に一通のメールを見せてくれた。
『今日は月が綺麗ですよ』
それは彼の愛する奥様からのメールだった。
月が綺麗だから、彼にその月をご覧なさいとたったそれだけのメール・・・。
彼も嬉しそうに月を眺めていた。
素晴らしい!本当に彼が親友で、また奥様がそれを感じる女性で嬉しかった。
今の世の中は月を愛でる余裕は無くなったのかもしれない。
でも、僕の大切な人たちはやっぱりそれを感じる人が多い。
とにかくそれが嬉しかった。そんな満月の夜。
2.18.bmp
月 GETU   紙本彩色  6号

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